「新・熱海殺人事件」の4公演、「改竄・熱海殺人事件モンテカルロ・イリュージョン～復讐のアバンチュール」は全公演が中止となりました。

楽しみにしてくださっていたお客様に残念な思いをさせてしまったことを本当に心苦しく感じています。

悪いのはコロナで、誰が悪いわけでもないことは確かで、先週まで目の前に広がっていた光景、お客様の拍手を思い出すと、ただただやり場のない気持ちを抱えるしかなくて、言葉になりません。

 

新熱海は、正直言って最初に提案していただいた時、モンテとダブルなんて、相当きついことが想像できたので、本当にやるべきなのかと考えたりもしました。

でも稽古に入ってみて、岡村さんが伝えてくださる熱海の世界の奥深さや楽しさが4年前よりよく心に届いてきたし、普段映像の監督をされている中江さんの俯瞰的で新鮮な目線、意見、一つ一つの言葉が本当に刺激的でより深い作品、まさに新・熱海殺人事件となりました。

そこにあっちゃん伝兵衛がいて、Ｗチームの愛未ちゃん、おんちゃん、海里、りゅうちゃんの４人がいて、カズマックスがいて、今しか出会えなかったこの座組、初舞台から10年の節目に新熱海で熊田にリベンジすること、全てがなくてはならなかったことだと感じています。

みんなとの芝居が本当に楽しかったし、中江さんの、岡村さんの感想を聞くのが楽しかったし、日々の日替わりネタを考えるのもそういったものは本来得意ではないので難しかったけど、どこか楽しくて、完走できなかったし、モンテの公演に影響してしまったことはキャスト、お客様、スタッフさん、いろんな方に申し訳なさはすごくあるけど、モンテはプレーンな熱海を観ていただけるとより楽しめる作品でもあるので、Ｗ出演にはやっぱり意味はあって、挑戦させてくださった全ての皆様に感謝しています。そして、新熱海に出会えたことに感謝しています。

 

ただモンテに関して、中止のお知らせが遅くなってしまい、皆さんにご心配とご迷惑をお掛けしてしまいました。本当に申し訳ございません。

僕が新熱海の状況を受けて濃厚接触者の認定をされた時、キャスト・スタッフ全員、きっとお客様も中止という二文字が頭によぎったと思います。僕もそれを覚悟したし、実際最初はそうなると聞いていました。

でも関わる方々が熱海殺人事件で、紀伊國屋ホールで、昨年のリベンジであるモンテカルロ・イリュージョンだからこそどうにか届けたいと思ってくださり、可能性が少しでもあるなら、改竄熱海を、モンテを届ける方法を検証したい、とご提案をいただきました。

 

僕は、中屋敷さんが僕にモンテの木村伝兵衛を出会わせてくれたその日から、これを舞台上で形にしたいと願ったし、昨年コロナ禍での上演になって、今年再演が決まったけど、より多くの方にこの作品を届けるまでやり続けたいという気持ちをもって挑んでいたので、今回中止になったとしても、いつか必ずまたと思っていました。

でも再演と思って参加した今回のモンテは、昨年からパワーアップしたものに変わり、リベンジャーズと呼ばれる柿喰う客の四人も加わり、新曲も増え、すいーつさんの新たな振付や新たな構成も含めて「復讐のアバンチュール」という副題に沿ったもはや新作とも言えるくらいのものになってきていたので、じゃあ中止になったからまた再演となっても、その時はまた中屋敷さんの手でその時の新たなモンテが生まれるはずで、今回のモンテは今回でしかあり得ないことだと感じていたから、スタッフさんからご提案いただいた時は、本当に嬉しくて、僕もルールと体調が許す範囲で僕のできることをしようと、今朝まで事務所スタッフのサポートを受けながら、キャストの鳥ちゃん、修司、兒玉ちゃん含め、ずっと皆さんとギリギリまで検証と話し合いを続けてきました。

 

中止に至ったのは、ネガティブなことでなくて、去年本当に熱い拍手をお客様にいただいた作品だからこそ、届けたい気持ちだけでなく、そのクオリティを維持することも同時に考えながら検討に検討を重ねた結果です。

お客様を待たせてしまった上で中止、ということになってしまって心苦しいですし、悔しい気持ちでいっぱいですが、僕自身はキャスト3人としっかり意見のやり取りをしましたし、岡村さんやスタッフさんとも直接電話して可能性を探ったこと、気持ちを聞いていただいたこと、お考えを聞かせていただいたことは今後に繋がる貴重な経験になりました。

何より、2019年の朗読会のあの日から2年以上経った今、こんな形ではあったけれどみんなの熱海、そしてモンテへの愛をこれほど感じられるなんて思わなくて、物理的には無理でもどうにか僕を真ん中に置いて芝居を作ろうと一生懸命尽力してくださったことも含めて、心から嬉しかったし、その案もやしきさんらしくこの状況下でもこんな演出が思いつくなんて、さすがとしか言えないし、やっぱりやしきさんが大好きだと感じ、改めてこの出会いに心から感謝しています。

 

今朝、中屋敷さんとも電話をして、絶対また復讐を、と誓い合いました。

僕はどういう世の中になろうと、今後どんな活動をしていこうと、みんなにこの作品を届けることを諦めないです。

新熱海をやらせていただいたことで熱海殺人事件の魅力をより理解できたこともありますし、リニューアルした紀伊國屋ホールでさらに歴史を刻んでいく作品にまた関われる役者でいられるよう、精進していきます。

 

ただ、今健康状態はいたって良好ですが、新熱海の稽古開始の時からめちゃくちゃ緊張感と気持ちを張っていたので、気持ち的には正直疲れはしています。苦笑

一旦しっかり心身を休めて、次の梅棒第12回公演「おどんろ」稽古合流に向けて、しっかり切り替えていきます。

 

応援してくださった皆様、俳優10周年にこの作品に携わることをお祝いしてくださった皆様、本当にありがとうございました。

皆さんへの感謝の気持ちと新熱海、モンテへの思いはまた劇場で、舞台の上で伝えていきます。

これからも宜しくお願いします。

 

多和田任益